かわいくて、カッコよくて、恥ずかしいクルマたち。超高精細デジタル撮影 『痛車』 写真集!
アニメやゲームの美少女キャラクターの巨大イラストをあしらった車を痛車という。 「痛い」 とは視線が痛い、恥ずかしい様を意味している。週末の秋葉原の街を艶やかな痛車が疾走する光景はアキバ名物となっている。その車内はおたく部屋をそのまま路上に持ちだしてきたように見え、複数の液晶モニター、フィギュア、ぬいぐるみ、抱きまくらなどが飾られている。痛車オーナーたちはお気に入りの美少女キャラクターを 「二次元の嫁」 と呼び、おたく特有のメタ視点で自分たちをネタ化して楽しんでいる。
近年、痛車はカスタムカーの一ジャンルとしてすっかり定着してきた。企業主催の大イベントから地方の手作り町おこしイベントまで大小様々な痛車イベントが全国で毎週のように催されている。ブームの広がりとともに、走り屋などレース系カスタムから痛車へ至る者、高級カーオーディオなど音響系や、ヤクザ・ヤンキー文化の流れをくむVIP 仕様、さらにデコトラなどの過剰装飾系カスタムから痛車へ至る者、そして等身大ドールや着ぐるみ、コスプレ活動の移動手段としての痛車を作る者など、異なるジャンルにいたクルマ好きのおたくたちが、痛車という一つのカテゴリーに集まってきている。(中略)
痛車のステッカーの耐用年数は1,2年のため、撮影を開始した2009 年当初の痛車は本書出版の2012 年末の時点ですでに存在しない。引き続き新作アニメの別の美少女キャラに心変わりして張り替えた人もいれば、車自体を新しくした人、家庭や仕事の事情で全部剥がして 「すっぴん」 に戻して痛車を卒業した人もいる。それぞれのオーナーたちが手間ひまかけて創り上げた、素晴らしく、楽しく、あっと驚かされる痛車たちの姿はずっと残ることなく、儚くも消えてしまうものなのだ。本作はその痛車たちの姿を高精細デジタル撮影で記録していったプロジェクトなのである(坂口トモヒロ/本書解説文抜粋)。